九話 終わり

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この災害による死亡者は多いものの、不可解な死人はこれと並ぶぐらい多い。 地震の震源地は、苳村の最北端辺りである。震度はマグニチュード7で、揺れは縦揺れであった。 だが、他の市町村では地震があった形跡はない。又、地震測定機はこの地震を観測していなかった。 これほど大きい地震のはずなのに、他への被害がなかったのも大きな謎である。 この村には、不思議な結界が張られていた。完全に下界と閉ざし、余所者を寄せつけなかった。 私は、今回の大地震の取材で初めてこの村に来た。 その時、村は地震で変わり果てた姿になっていた。人々は苦しいながらも、必死で助けを求めていたのかもしれない。 私はこの村で何があったのか、読者に伝えなければならないと思った。だから私は、この村の歴史、地理を調べた。 そして、全てを記そう。あの村で、一体何があったのか──。 『苳村の大地震』─著・京極堂 晃雅<テルマサ>
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