十話 残月録‐地獄話‐

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こんな綺麗な自分でいたかった。 これが彼女の望みだった。 「××××はん、近藤さんですよ」 襖の向こう、他の遊女の声がした。 待ち人である近藤勇が来たらしい。 それでもちっとも嬉しくなかった。普段は近藤さんが来るだけで心は華やかになるが、今日だけは優れなかった。 「今日は体調が優れへんから、帰らしてくれへん? 」 「珍しいですね。××××はんが嫌がるなんて…」 遊女は残念そうに言うと、下に降りた。 再び空を見上げて、ため息をついた。
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