十話 残月録‐地獄話‐

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これもまた【悪夢】。 幽霊と言うものは妄想の一部でもあり、人の怨念でもある。長き怨念の渦に呑まれ、歪んだもの。 女は血走った瞳で目的も全て忘れ、妖怪と慣れ果てた。 声にならぬ叫びとなり、闇に飽和する。 昔、人は妖怪を恐れた。 昔、人は悪夢を恐れた。 悪夢は妖怪が見せているものだと、言われてきた。だが、それは違った。 妖怪が消えた浮き世、悪夢は普通に人を苦しませた。おぞましき力が有となり、見えぬ力は否となった。 それこそ、“羅刹”。 おかしな日常。生と死。歪み。落ちた空。走馬灯を見ているような霞んだ世界。
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