十話 残月録‐地獄話‐

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全ては夢物語。 ───── ─── 地面に落ちた紙にはそう書かれていた。 男は慰霊碑の前で、真実の一部を知った。だが、まだ真相は闇の中にあるのだった。 「嗚呼、この悪夢はホラー作家にとっては狂おしいほどの何者でもない。 無理に真実を見ようとすれば、逆に闇に呑まれる。それこそ、闇の恐ろしいこと。 畏れ。恐れ。怖れ懼れ慴れ惴れ悸れ懍れ慄れ── 闇に迷え! そして畏れよ! 」 男──京極堂は笑い、風と共に消えた。 夕日に染められた慰霊碑は赤を帯び、影を成す。刻まれた名前は慰霊碑の影となり、見えなくなる。 茜に染まる山々。澄み渡る風。 原っぱとなった村跡にぽつり、と立つ慰霊碑は淋しげに染まる。 また闇が迫る───
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