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「ほら、見えてきたよ」
千寿が指差す先には蔵があった。
ツタに覆われた蔵は人の気配がなかった。しん、とした無空間のような感じだった。
南京錠でしっかりと固定された扉は、中に何かがあるということを具体的に表していた。
千寿はポケットから鍵を取り出すと、南京錠を外した。そして扉をゆっくりと開けて、中に入った。
鈍い音がして、蔵の中を日の光で照らす。それでも暗かった。
「──────妖姫」
かつて、新火の両親を殺した憎き『悪夢』の支配者。彼女はこの村に災厄をもたらした、張本人にである。
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