24人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
赤い蟲がはびこる闇の中に別な足音が近づく。素足で歩いているのか、時折蟲を踏み潰す音が響き渡る。
ペタペタ、ブチュグチュ、ズルズル
妖姫は目を細め、音の主を睨み付ける。
音の主はぼうっ、と闇の中に浮かび、その姿を晒す。
黄色い肌。長い黒髪を下の方で束ね、漆の瞳で嗤う。
「……あら、貴方が来るなんて珍しいわね。何かあったの?」
「うん? いや、別に。ただ、悪夢の理解者が現れたって聞いたからね」
「ふーん」
妖姫はつまらなそうに軽く返事をした。
最初のコメントを投稿しよう!