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「君は相変わらず憎たらしくいうな」
妖姫はうっすらと笑うと、闇の中へと消えていく。
赤い蟲たちは蠢きながら、ゆっくりと闇を赤に染める。その蟲の名はない。が、この世のものではないことがわかる。
■ 苳村
生ぬるい風が夜を駆ける。人の気配がひとつもしない中、死体が横たわる。
死体があるのは村の外れの井戸のそばである。井戸の水は枯れ、草は刈られずに伸びきっている。
新火は慶輔とともに死体を見ていた。
身体は無惨に切り刻まれ、肉片は近くの草に飛び散っていた。死体の身体には赤い蟲らしきものが、無数に蠢いていた。
「うっ………」
新火は手で口を押さえ、吐き気を堪えた。
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