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「ねぇ、二人共……」
慶輔は言い争っている二人に、静かに言った。
その顔は恐怖と焦りに満ちていた。額には薄らと汗が滲んでいた。
慶輔の視線の先──赤い服を着た女性がふらふらしながら、こちらに近づいて来る。
顔は捻れ、口は耳まで裂けていた。裸足で、覚束ない足取りで近づいて来る。
「…なあ、あれって、『口裂け女』じゃねーの?」
「…違うでしょ」
「…口裂け女も、悪夢の一部なんだよ」
「「……………」」
二人は押し黙った。
悪夢はゆっくりと近づいて来るが、何故か進んでいないように見える。
「早く! 祠の扉を開けて、中にある水晶を割って!!」
慶輔は怒鳴った。その表情は焦っていた。
「で、でも鍵が…!!」
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