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暴れた時に投げ出されたのか、床に落ちている携帯に視線を移した。
「確か、誠治の親は祓えるだけの力はあるって言ってたよね?」
携帯に手を伸ばす。
勝手に人の携帯を開くのは悪い気がするが、今はそんな事を気にしている状態ではない。
「ぁぁ…み…お…みお…。」
「えっ?」
知らない名前が苦しそうに漏れ出たのを聞き、急に思考が止まった。
考えるまでもなく、女性の名前なのだからそういう事なのだろう。
ハッ。と我に返り、手早く検索をかける。
『実家』と記されたソレにコールをかけ、繋がるまでの時間を焦れる思いで待つ。
先程の名前が何なのか、それを気にするなんて…嫉妬?まさか?そう思うと、場違いではあるが鼻で笑ってしまった。
「もしもしー?」
相手が出たのを確認するや否や、こちらの紹介も忘れて一気に捲し立ててしまっていた。
「おばさん!誠治が、誠治が憑かれてて危ないんです!」
本人と思って出るのは普通だろうが、知らない女性の声に驚きもあっただろう。
だが、誠治の親は突然の声に驚きの声も漏らすも、すぐに互いの状況を理解して声をかけてくれた。
そこまで詳しい訳でないので見たままを告げる。
「ん、解った。こちらでも視ておくよ。大変だけど、あんたは誠治をそのまま動きを封じておいて。」
声を通して、互いに相手の力量が感じ取れた。
だからか、自分は自分でやれる事をしなきゃと痛感した。
大事な事を言い忘れていた。
「あの、誠治が人の名前を漏らしていたんです。みお。って…。」
「ん?…そう。懐かしい名前だね。そうは見せてなかったのに、引きずっていたなんて。そういう事ね。」
合点がいったみたいだ。
「でもね、人でなくて昔に飼ってた犬の名前だよ。兎に角、任せたからね。」
暫し呆然としていた。
(人騒がせな。)
ジロリと睨み付けてみる。
だけど、何故だか安心している自分がいた。
「任された以上、って訳ではないけど…。私がやれるだけ守ってあげる。」
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