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頭の中で整理した。
あいつは俺が殺した。
それも一回り以上も前の昔だ。
それが、今になって出てきたという事は…未だ成仏していないという事だ。
忘れちゃいない。
いや、忘れられる筈がない。
『家族』だったのだから。
ひたすら黙考していると、上から降りてくる足音が聞こえて頭を切り替える。
ふと先程までのを思い出し、顔を合わせるのも気まずく落ち着かなくなったので煙草に手を伸ばした。
カチャ。と、ドアが開けられる音がするのと煙を吐き出すのは同時だった。
叶は何時もの様に何も考えていない俺を見てもどんな状態か解っているのか、先に台所へ向かってお茶の用意をし、コーヒーと紅茶を1つずつ盆に載せてからやってきた。
コーヒーを差し出され、叶は紅茶を。
不思議に横目で見やりながら一口啜ると熱さで少し慌ててしまった。
そんな俺に笑いかけて。
「考えなくても解る。アンタは単純だから。」
グサッと一突きする叶はいつもの顔なのだが、少し穏やかに見えるのは気のせいであろうか?
「その、なんだ?さっきはすまなかったな?」
まだ恥ずかしさが残っていて、顔を背けて煙草を吸ってたりする。
「…うん。」
そういう叶も言葉に力がなく、頬を少し染めていたりする。
どうにも気まずい。
が、それを打ち消すのに叶がどうするかを口にする。
「…で?」
で?とは、俺の身に起きた事でどうするのかを聞いているのだろう。
「これは俺の心の問題だ。無理矢理はして欲しくない。だから、サポートはしても最後には俺次第だ。」
そう告げる俺に。
「そう…。」
少し淋しそうに返すのだった。
自分一人で解決するにも、叶をこのままにしたくない気持ちが湧き、逡巡の後に。
「済まないが手伝ってくれ。もう自分を見失いたくない。」
暗に傷付けたくないとの思いを。
それに叶は快く首を縦に振った。
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