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時は慶応3年。
空に漂う冷たい空気は厳しく、しかし、凛とした表情をしている。
時折空は風の精を遣わせ、俺、御守戸若葉(みもとわかば)の袖をイタズラに引く。
その空は、睦月とは思えないほど青くどこまでも澄み渡り、金に輝く帝王は俺のかじかむ手を温める。
それと対照的に高揚している俺の心を、帝王はさらにあおりたてていた。
まるで俺の新たな門出ってやつを祝福しているようだ。
名家とはとても言えない、平凡な家系。
だが、しかし、俺の生い立ちは特別だった。
俺は御守戸家の長女に生まれた母と、英国人の父の間に生まれた。
母から受け継いだ癖っ毛は父のように薄茶色で、おそらくは両親から受け継いだであろう瞳は深緑色をしている。
そのせいで何かと喧嘩を売られたが、俺がまっすぐに育ったのは母の教えだろう。
「生い立ちや肩書で判断するのは心の弱い人です。若葉。あなたは強くなりなさい。誰よりも強く、優しくなりなさい。」
その言葉が今の俺を作ったと言っても過言ではない。
俺は強くなるため、あらゆる武術、剣術を学んだ。
才能があったのかなんて定かではない。
だからこそ俺は、毎日脱水症状を起こすほどの汗を流した。
怪我やら青あざなんて日常茶飯事で、骨折なんて両の指を合わせても数え切れない。
その練習量で、俺は天才以上の実力を手に入れた。
そんな折、飛び込んできたのは、「沖田総司が病床に伏している」という、知らせ。
この状況を打開できるのは誰だ?
俺だろう?
俺は誰よりも強くなったんだ。
その力をどう使うか?
母の教えが答えだ。
俺は第二の沖田総司になる。
この国の人々を守るために。
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