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総司の意味深な笑みに
「な・・・!何よ!」
ハルが目を三角にして怒ると
「我々の方が邪魔のようだな。行くぞ、ハル」
と斎藤がハルの肩を抱いて屯所へと引っ張っていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
と斎藤の手を振り払い、ハルが総司に
「総司、あのね」
と必死に声をかけるが、ちらりとハルを見た総司が
「では参りましょうか、お楽さん」
と言うとハルに舌を出して見せた。
「んな・・・!何よそれ!」
ハルが憤ってわなわなと震えながら総司を睨みつけると、お楽が
「あのお店のつぶ餡が、それはもう絶品なんですよ」
と総司ににこりと笑った後にハルに視線を送る。
「へぇ、それは楽しみですね」
と総司がお楽に笑い返すと、お楽がハルを見たまま総司の腕に自分の腕を絡め
「参りましょうか・・・『総司さん』」
と勝ち誇った顔で総司と屯所の門を出て行った。二人の後姿を口を開けて見つめるハルに
「では、我々も源さんにもらった落雁でもいただくとしよう」
と斎藤が総司たちに聞こえるように言うと、ハルを引きずっていった。
その時総司が顔だけ振り返り、斎藤に手を引かれるハルを見ると口を尖らせる。
が、ハルと目が合うとぷいっとそっぽを向き、お楽と楽しげに歩いていった。
そして誰もいなくなった中庭で
「一体何がどうなってるんだ」
とお楽の父親、永井がぽつりと呟くと
「はぁ・・・私にもさっぱり」
と近藤が頭を掻いた。
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