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今日も感情の無い目で、月を見上げます。 ギイ… 「飯だ」 パタン。 今日も冷たい食事が運ばれます。 ただ、いつもとは何かが違っていました。 「…?」 娘はそっと、閉ざされた扉を押します。 キイ… 堅く締まっているはずの鍵が、 「開いて…る‥?」 かつては健やかだった、力無くかすれた声。 「あ、あぁ…。ああ!!」 その声は、徐々に色づき。 大きな驚き喜びと、小さな戸惑いで目には涙が滲みます。 久々に湧いた、感情でした。 「いま、いま、今!!」 果たしに行く。 ギィ! バタン!! 暗く閉ざされた部屋に残されたのは、希望の涙と冷めた食事だけ。
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