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娘の細く弱った脚は、山を駆けます。
冷たい雨に体温を奪われても、
熱い日差しが喉を焼いても、
緩むことはあれど、娘の脚は止まりません。
何日も何日も歩き続け、
ひとつ、またひとつと傷は増えます。
「彼にまた、近づいた。また約束に近づいた!」
その傷すらも、娘をあと押しします。
『若者は死んだ』
男の言葉よりも、娘は若者との約束を信じて痛む脚を進めます。
「必ず彼はいるはず。だって彼は、愚かなほどにまっすぐなのだから」
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