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若者は大岩から立ち上がり、フラつく足取りで娘へと向かいます。 「あまりいい夢だったから、つい怠けてしまった。」 かつての立派な脚は、歩く事も簡単ではなくなりました。 「あなたの夢が、悪夢で終らずによかったわ。」 「わたしも、のんびりしすぎてお婆さんに似たみたい。」 かすれた声。 かつて柔らかく若者に触れていた手は、硬く、傷あとが無数にありました。 その手は、若者の薄くなった胸に添えられます。 「君の似たお婆さんが、可愛い人でよかったよ。」   細くなった若者の腕が、娘の骨が浮く体をきつく抱きしめます。   「「やっと果たした。」」 沢山の粒が、互いを濡らしました。
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