診察室

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それが、どうしてだろう? 何の音も聞こえない。鼓動も伝わって来ない。 心臓が止まってる? 私はとんでもなく困惑した。心臓の音が聞こえない。いくら手を当てても何かある気がしないのだ。 「え?ええっ!?嘘…」 私はあたふたとしているが、先生は動揺すらしてない。 「先生!心臓が…とまって…」 すーはー、すー、はー。 ためしに深呼吸をしてみた。息ができる。…でも、聞こえない。心臓が。 「大丈夫、大丈夫。」 先生は深呼吸しつづける私の手を握って、 「ほら、私も、ないから」 先生の胸に押し付けられた私の手は、その鼓動を感じ取ることができなかった。
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