プロローグ

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    前回までのあらすじ   対テロ特殊民間企業、アンギルノーガチの市街専門部隊アンギルソルダートに所属していた少年、朱禽飆琉(アカミトリ ツムル)はある日、自爆テロに巻き込まれ、気がつくと魔法が実在する世界に魔獣として召喚されていた。   彼はこの国、メルヒン王国を治める王族、ユリアナ家の末の少女、ラム・ユリアナの魔獣となり、なぜか彼女と付き合う事となる。 更に、元いた世界での彼女であるクラリッサ・シリウス・ディアハルトや娼婦見習いとして働くクープ・レンブランスも巻き込んで一夫多妻?状態の幸せな日々を送ろうとしていた。   しかし事件は突然起きる物……。 ラムのフィアンセであるウィルルコット枢機卿が彼とラムの婚約発表を行う会場で惨殺されているのが見つかった。 更にそれはユリアナ家の腹心とも言える存在であるガスタル将軍によるものとほぼ断定された。 この国において王は政には参加せず、政治はおおよそが枢機卿によるものだったため、暫定的ではあるものの彼の実妹であったクゥ(クープ)が就任。 『幸せな日々』に綻びが生じ始める。   そして飆琉も一つの傷を抱きかかえる事となる。 ラムとついに結ばれようとしたその時、メルヒン王国と不可侵条約を結んでいるはずの隣国、龍帝国からの侵入者が彼らに牙を剥いたのだ。 事故と不注意が重なり、飆琉は右腕を失い、代わりに自分は他人を傷つけることしかできないという思想を背負う。   誰もがココロに傷を負った。 しかし王族であるラムは自らを奮い立たせ、気丈に平常を努めた。 婚約者を亡くしたにも拘らず気丈を貫く彼女は、飆琉を元気にしようと彼を軍部の少佐に推薦した。 その思惑は意外なほどあっさりと通り、彼は下士官や部下の前で『力』を誇示することとなる。   この世界は悲しいことに『力』が必要なのだ。 建前、綺麗ごと、プライド、愛する人。 どんな物でも、それらを守るためには暴力じみた絶対な力が必要なのだ。   飆琉は世界をそういう形で受け止めた。 彼は自ら心の内に隠れることにした。 人を殺すという尋常ならざる圧力や恐怖から自分を守るために作られた第二の人格を残して。
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