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アルクがカティアと出会ったのは今から七年前。
当時、剣の修行のため王国内を巡る旅をしていたアルクは偶然にもカティアの故郷の村を通り掛かり、村の異様な雰囲気に気付いた彼が立ち寄ったことが全ての始まりだった。
すでに魔物の襲来によって崩壊した村で彼が目にしたのは跡形もなく崩れ去った建物と、魔物の犠牲となった人々のものと思われる大量の血痕や衣服の切れ端━━そして瓦礫の上で横たわり気を失っている幼いカティアの姿だった。
アルクに保護され幸いにも命は助かったが、心に深い傷を負い生きる気力さえも失いかけていたカティアのことをアルクは放っておけず、それ以来ずっと彼女を側で支え続けてきた。
もし、あの時アルクと出会っていなかったら、カティアが今こうして生きていることはなかったかもしれない。
「━━カティア、さっきはその……ごめん」
カティアの視線に気付いたアルクはバツの悪そうな顔で彼女に謝る。
「ううん、気にしないで。ちょっとだけ、恥ずかしかったけど……」
「そ、そうか……」
そんな二人のやりとりを先程から微笑ましそうに眺めていた赤髪の女性はふと食事の手を止め、カティアに話しかける。
「昨夜はちゃんと眠れた? 最近なんだか疲れてるみたいだけど」
カティアの疲れは本人が思っている以上に顔に出ていたのか、そう問いかける女性の顔は少し心配そうだった。
「あ……はい、私なら大丈夫です」
実際は悪夢のせいで満足には眠れていないのだが、二人に心配をかけまいと小さな声でそう答える。
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