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「そう? ならいいけど……」
カティアの返答に赤髪の女性は肩をすくめ、手元のカップにコーヒーを注いだ。
女性の名はルキノ。外見は二十代半ば程であり、腰まで届く長い髪と瞳は、燃え盛る炎を思わせるような鮮やかな赤色をしている。
ルキノは飾り気のない黒い長袖のハイネックに、灰色のロングスカートという格好しており、銀色の十字架のような形をしたペンダントを服の上から身につけていた。また、スカートの左足側には動きやすいように大きなスリットがあり、ときおり素足が見え隠れしている。
ルキノは大陸に五人しかいないとされる『魔女』と呼ばれる特殊な人間の一人であり【流星の魔女】の名で他国にもその実力は知れ渡っている。
彼女はあまり自身のことについて多くは語らないが、どうやら魔物の血を引く家系の出身であるらしく、本来人間には不可能である『魔術』と呼ばれる未知の力を自在に扱うことができた。
ルキノはカティアとアルクの雇い主であり、日頃から何かと二人のことを気にかけてくれる面倒見の良い気さくな人柄で、カティアが心を開く数少ない人物だった。
「あの……ルキノさん」
「ん?」
ルキノはコーヒーを口に運ぼうとした手を止めて返事をする。珍しくカティアの方から話しかけられてルキノは少し意外そうに目を瞬いた。
「その、お気遣い……ありがとうございます」
そう小さな声で呟き少し恥ずかしそうに俯く。それはカティアにとっては精一杯の感謝の言葉だった。
それを理解しているルキノは嬉しそうに笑顔で頷いた。
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