一章【平穏な朝】

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朝食を終え、三人が宿屋の外へ出ると気持ちの良い青天だった。ここしばらく雨が続いていたせいか道は微かにぬかるんでいる。 まだ朝の早い時間ということもあり、街の中を出歩く人影はまばらだったが、日が高くなれば普段のように人々の往来で賑わうだろう。 「ルキノさん、今日の仕事のノルマはどれくらいなんだ?」 街を出て、道の両側に木々が立ち並ぶ街道を進みながら、アルクが少し前を歩く彼女に問いかける。 「んー、大体エレメントが十キロ分くらいあれば足りるかな? 上級の魔物でも狩れればもっと少なくて済みそうだけど」 『エレメント』というのは魔物が絶命した際に変化するエネルギーの結晶のことだ。 見た目は人の拳程の大きさで光輝く宝石のようだが、その中には強力なエネルギーが内包されている。 魔物の力が強大である程、それに比例してエレメントに内包されているエネルギーの量も多くなるため、特に『ドラゴン』のような上級の魔物であればエレメント一つでも膨大なエネルギーを確保することができる。 エレメントから特殊な技術で抽出されたエネルギーは、機械を動かすための燃料や、銃弾や爆薬などの原料になるため貴重な資源として人々に重宝されていた。 そして、依頼を受けて魔物を討伐しエレメントを採取するのが彼女たちの仕事なのだった。
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