一章【平穏な朝】

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「最近はベルギアからの依頼が増えてるからね、気合を入れて魔物を狩らないと」 ルキノは両手に持った依頼書の束に軽く目を通しながら呟く。 「ベルギアか……あの国は王が代わって以来やたらと軍備の拡張に力を入れてるみたいだからな。戦争でも起きなければいいんだけど」 アルクは複雑そうな表情で腰のベルトに差した剣を握る手に力を込める。 『ベルギア王国』はオルキア大陸北部の大部分を占める大国であり、カティアたちが暮らしているミラン王国に次ぐ広大な国土を有する軍事国家だ。 ベルギア王国の領土は比較的寒冷な地域が多く、農作物があまり育たないこともあり、豊かな土地を求め幾度となく他国を侵攻しようとしてきた歴史がある。 数十年前に起きた国境間での紛争を最後に目立った軍事衝突は起こっていなかったのだが、先代の急死により王が代わって以降ベルギアは急速に軍事力を拡大し周辺国を威圧するようになってきている。 「どうだろうね……ミランの女王は他国を刺激するような軍事行動は控えるように警告してるようだけど、ベルギアは聞く耳を持たないみたいだし」 そんなルキノとアルクの話をカティアは不安そうに聞いている。 「ま、俺たちがそんな心配しなくても大丈夫だよな。いくら強力な軍隊を持ってるベルギアでも、ミランやエルトリアとの戦争は避けたいだろうしさ」 不安そうなカティアの様子に気付いたアルクはあえて明るく話す。 「そうだね━━と、この辺りはそろそろ危険区域だから二人とも身構えておいた方がいいよ」 魔物の棲息地帯に近付いたため、ルキノがそう言いながら辺りの様子を伺った。
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