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母親は少女へと無我夢中に腕を伸ばすが、その手は届かず、ただ虚しく空を掴むだけだった。やがて彼女は何かに引っ張られるように少女の視界から消え去っていく。
最後に少女の目に映った母親の顔は優しく微笑んでいるように見えた。そして彼女は小さく、だがハッキリとした言葉で最愛の娘にささやく。
『生きて……カティア――』
その言葉を最後に母親の声は完全に途絶えた。
少女は母親のことを声の限り必死に呼ぶが、もうその声が届くことはない。
そして、少女の意識は真っ暗な闇の中へと墜ちていった――
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