病院の少女

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病院の少女

「いってきます」 制服姿の少年が、家を出て、学校への道を自転車で進んでいく。 ――彼の名前は義樹(よしき)。N県の公立高校に通う、高校3年生。母・千尋と、3つ下の妹・紗紀で3人暮らしをしている。祖父母は小学生のときに他界。父は中学生のときに事故で亡くなった。 家の家計を支えていた父親がいないということで、母のパートと、義樹も自ら率先してアルバイトをし、家計を助けている。朝の新聞配達に、夜は家の近くのスーパーでレジ打ちや品だし。土日は日雇いのアルバイト。 今はこんな辛いアルバイトだけで、それもあと少し。 義樹の成績は学年で5本の指に入るぐらいの優秀な生徒だったので、卒業後の進路は、第一志望の某有名メーカーへの内定が決まった。 今は12月。冬本番に近づきつつある今日この頃。 時折、空から降る銀色の粉雪は、町行く人々に冬の訪れをより一層感じさせた。 でも、義樹にとって、今年の粉雪はいい気がしなかった。なんの理屈もない。ただそう思った。
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