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ならば、それもろとも壊してやろう。
目的は一人でも多くだ。
肩を震わせ、表情に浮かべるのは喜悦のもの。
「さて、次はどんな手段を使うとしようか………」
笑みを絶やさない男の背後には、意識なく倒れている女性がいた。
その美しい金髪が風で靡き、蝋燭の火も消えてしまった。
※※※※※※
見ず知らずの少女に見つめられていた。
緑のスカートに白い上着、そこにある真っ赤な眼。スカートと同じリボンをつけた髪は黒く、背中からは服からはみ出るように黒い翼が左右から飛び出ている。
「……………うにゅ?」
「……………うにゅ?」
首を傾げられたので、思わず同じ言葉で返してしまった。
再び沈黙の後、ようやく彼女は口を開いた。
「貴方は食べていい親類?」
「……………はい?」
理解出来ない言動に、蓮は硬直する。
それに構わず、彼女は続けた。
「だいたいさ、この地底は陽がないからじめじめするのよ」
「そ、そうなのか?」
「でね、今度M―1に出るのね」
「お笑い芸人さん?」
「コンビなんだけど、デラックスコンボイとデラックスメガトロンどっちが良いかな?」
「……いや、知らないよ………」
「というか、貴方も一緒にフュージョンする?」
「ファイナルフュージョン承認は偉い人に頼んでください」
「じゃあさ、貴方は誰?」
ようやくまともな会話が出来る、と蓮は肩を竦めた。
「俺は神谷蓮、っていうんだ」
「そう……でね」
「待って待って待って。こっちが名乗ったのに、そっちは名乗らないのか?」
「……………うにゅ?」
会話不成立。
額を押さえて、蓮はとりあえず大きく息を吐いた。
「ここは、どこだ?」
「ここは地霊殿の一室だよ」
眼前に、こいしの顔があった。息がかかるくらいの距離で、まさしく一瞬で現れたのだ。
一瞬だけ頭の中が白くなるが、すぐに自我を取り戻してやるべきことをやる。
こいしの頭に手を伸ばし、ベッドからその身をどかした。
「むっ……レディにその扱いはないんじゃないかな?」
「だったら気配を消すのをやめろ、っての。内心本気でびっくりだよ」
突然、本当に突然だったのだ。
気配も音もなく、突然視界に彼女の姿が現れたのだ。多少なりと気配を感じることができる蓮にとって、驚きのことであった。
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