陽が差さぬ場所

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その凄烈な神気は間違いなく本物であり、たとえ人化したことによって通力が抑えられているとしても、その凄まじさには何度挑んだとしても勝てる気がしない。 「気にすることはないよ。あんた達のような者があっての神だからね。それに、地底の状況も詳しく知りたいし」 「………わかりました。ですが、お茶は自分に淹れさせてください」 すぅっと、青鬼が発する空気が変わった。 それを感じた神奈子は、気付かれないように息を呑んだ。 「こう見えて、お茶にはうるさい性格ですので」 それを聞き、神奈子はほぅと嘯いた。 妖怪誰しも趣味というのは持っているが、意外なものだ。 これは旨そうなお茶が飲めると、神は細く微笑んだ。 ※※※※※※ 幻想郷。 それは忘れ去られた者達が集う故郷。 全てを等しく受け入れる楽園。 善意も悪意も、全てが愛される。 「それが、幻想郷……か」 「貴方の疑問に答えることが出来ましたか?」 さとりから差し出された紅茶を一飲みして、蓮は頷く。 幻想郷には人間の他にも妖怪や幽霊といった種族は住んでおり、食っては退治されるという絶妙なバランスで均衡を保っているのだという。 そして、人間が妖怪と戦うために生み出された決闘方法がある。 互いの一定の霊力や妖力を弾幕として、美しさを兼ね備えて戦う。 弾幕ごっこという。 これは殺しを行ってはいけない。それが絶対的ルールだ。 その規定がある限り、勇儀も加減をして戦う。曰く「戦いの後に酒を飲む相手がいなきゃ、虚しいだけ」だと。 平和的なのか荒事なのか、判断は微妙だ。 だが、少なくとも。 「さっきのあれは、違うよな」 「えぇ。あれは弾幕ごっこではない」 さとりから差し出された紅茶を一飲みし、蓮は息を吐く。 先程まで対峙していた橋姫、パルスィは別の部屋にいるという。また暴れるともわからないので結界を張ったというが、神相手では不安を禁じ得なかった。 「つーか……本当、何でもありだな」 改めて幻想郷という世界を知り、蓮がそう嘯いてしまうのも仕方ない。つまるところの、外の非常識がこの場所に集まっているのだから。 「ここ地霊殿は元地獄で、灼熱地獄を管理しているんですよ」 先程まで不成立の会話を繰り広げていた少女、霊烏路空(れいほうじ うつほ)が窓を開けたりとして温度を調節するという。
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