陽が差さぬ場所

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聞きたいけれど、彼は眠ってしまった。 まだ、時間はある。これから知っていけばいい。 そっと微笑み、さとりは部屋を後にした。出る際に電気も消し、部屋は暗闇に包まれた。 暗闇に包まれる部屋に、音もなく女性が現れた。 そっと手を伸ばし、眠っている蓮の頬を優しく撫でる。 「………鉄の子。その身に枷がなかったから、この子に辛い宿命を負わせてしまった」 いや、この子が六花の一片となった瞬間から、これは運命付けられていたのだろう。 死んだという結果を歪ませてまで、彼に世界の命運を押し付けてしまった。 「………ごめんね、涼華」 そっと目を伏せて、頬を撫でていた指を机にある首飾りへと持っていく。 チェーンは壊れたままでそこに鎮座しているが、まるで蓮を見守っているようであった。 彼女が呪言を唱えると、首飾りの瑠璃水晶が淡く光だした。それは目覚めを促すようなものではなく、気付かれない程度の輝きだった。 「…………ごめんね」 光が止んで部屋に明かりがなくなった時、女性の姿は消えていた。 最後まで謝り続けた女性ではあったが、この場に誰かがいたのなら気付いていただろう。 その優しい眼差しは、まるで母親のごとく心地いいものだったいうことに。 少女は気付いていない、彼が放つ力の意味を。 青年は知らない、己に化せられた運命を。 世界は告げた、終わりへの道が繋がり始めたことを。 世界は委ねた、鉄の意思に。 やがて、それは絶望を打ち砕く力となろう。 、
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