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火焔猫燐、さとりのペットであり黒猫である。先日の際は街の様子を報告したあと、パルスィの代理として橋にいたのだという。
なぜか蓮の右胸辺りに頭を押し付けるのが気に入ったらしく、黒猫状態人化問わずのし掛かってくるのだ。
「にゃーん、だってこうしていると落ち着くんだもん」
そういえば、死ぬ以前も犬や猫が歩いてきては飛びかかってきて、しゃがんでみては右胸に頭を押し付けてきた。
そんならちのないことを考えながら、燐の首根っこを掴み立ち上がった。
「今日は何かな」
「さぁ、あたいらはすでに決まってるけどねー。人間の料理は……」
「まっ、料理は旨いから何でも良いんだけどな」
そんな会話を交わして燐をおろし、二人は部屋を後にする。
そこそこ広い屋敷の一階に食間はあり、二人が着く頃にはみんなが揃っていた。
所定の席に座ると、さとりはにこりと優しい笑みを浮かべる。
「気にしなくて大丈夫ですよ。ゆっくりやっていけば」
「………ほんと、さとりには隠し事出来ねぇな……」
苦笑を浮かべたさとりは揃ったことを見渡し、挨拶と共に食事が始まった。
この日の献立は簡単な野菜炒めなのだが、なかなかに美味だ。調理はさとり自ら振るっているというが才能がある。将来は良いお嫁になるだろう。
元々人間のいない地霊殿では動物用の料理しかなかったのだが、わざわざさとりが作ってくれたのだ。これで残したりしたら天罰が下る。
「そういえばさー」
思い出したような言葉を投げてくる空に、蓮は首を向ける。
「どうした?」
「蓮って、何か武術をやっていたの?」
一瞬だが、箸を動かしていた手が止まる。
あぁ、そういえば、ここに初めて来た時に言われたな。
―――六花の一片を担う、強き武人よ
さとりに過去を暴露されたため、慌てて心を無心にしたのを覚えている。
その時のことを示しているのだろうから、蓮は頷いた。
「空手とかをやっていたの?」
「……いや、殺しさ」
空間が固まった。さとりを除いた全員が、蓮を見ていた。
「………っても、殺し合いくらいのレベルの高い道場だった、ってだけさ」
「じゃ、じゃあ強かったんだ?」
予想外の発言だったために、こいしは吃りながらも質問する。
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