陽が差さぬ場所

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≪よかろう。して、誰にさせる≫ この世界へ引き込むには結界があり、それを超えることはこの場にいる二人にはできない。 「閻魔に。すでに手はずは整っております」 ≪なるほど。隙間妖怪や巫女では、すでに死者をこの地へ呼ぶことはまかりならんか。よかろう、好きにするがよい≫ 「ありがとうございます」 再びお辞儀をして、女性は立ち上がり踵を返した。そんな彼女を、声は呼びとめる。 ≪何故、その者に肩入れをする。その者は何者だ?≫ 「そう、ですね………」 その者は、大勢の命を守るために、友も信念も捨ててしまった、俄然なくも強い子供です。 言い換えるのなら、鉄のような。 言葉とともに、強い風が吹き荒れた。 そして、灯篭の火が消え、世界は闇に包まれた。 俄然ない子供よ 今一度お前に生を与えよう それを生かすも殺すもお前次第 だが、絶えない災いの運命がお前に課せられるだろう ならば、お前はその身を鉄として抗うがよい 錆び付くまで戦い、やがてそれは美しい幻想を生み出すだろう それは眠ることなく降り続ける、白い六花のごとくに 、
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