2章 2人のキョリ

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止むことを知らない雪が遠くの街灯や家の明かりに当たってチラチラと反射している。 その様子は幻想的でしばらく心を奪われた。 「綺麗だ…アイツにも見せてやりたいもんだな…」 素直に、思った事を口に出してみる。 別に人気は無いから呟いていても何も恥ずかしくはない。 むしろ呟くか何かしないとさっきの事を思い出して凹むだけだ。 「しばらく歩いてみるか…ここには居たくないしな…」 独り言をこぼしながら歩いていく。 雪を踏みしめる音が大きく感じるほど静かで、逆にそれが寂しさを強くする。 「ハインケル…俺は、お前が…」 “好き” その言葉を言えない。 良い意味でも悪い意味でも今までの関係を覆す一言。 傷つくのが怖くて、今までの関係が壊れるのが怖くて。
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