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「ハインケル…辛かったよな、今まで全部抱えてたんだな」
そうだ、ハインケルはいつも弱い所を見せないで自分で全部抱えて…
文句、弱音を吐いたことはなかった。
だからいつもハインケルはどこか辛そうな顔をしてたのか…
静かな中、月明かりだけが抱き合っている二人を照らす
照らされている所はほんのり明るく、優しい光に満ちていた。
「…大丈夫か?ハインケル」
「あぁ、でももう暫くこのままで居て良いか…?」
そう言いハインケルは手を俺の体に回し、抱いてくれた。
さっきよりも密着し、互いの息づかいが聞こえるのは回りが静かなせいかもしれない。
時を忘れるほどの間抱き合ってからハインケルが口を開いた。
「…ちょっと寒いな」
泣いていた事もあってか若干赤くなった目を擦りながら言った。
「寒いか?…へへっ、これで大丈夫だろ」
笑いながら自らのコートをハインケルにかけてやる。
驚いたようにハインケルが見ていた。
「あ、ありがと…な」
恥ずかしいそうに声を小さくして礼を言ってきた、コイツ、やっぱ可愛いな。
「じゃぁそろそろ帰るか」
獣化していればまた違ったが、人間の時ではさすがに寒い。
俺ら二人はずっと寄り添いながら人気のない道を戻って行った。
まだまだ夜は始まったばかり
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