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シャアァァ…
キュッ
「じゃあ、私仕事だから行くね」
チュッ
「いってらっしゃい」
彼のマンションでシャワーを浴び、いったん自分の住むアパートに帰り着替えてから何事もなかったかのように会社に出勤した。
「おはよう。冴香」
「おはよう、菜那」
ドンッ!
「痛ッ!!純っ!!猪じゃないんだから突っ込んでこないでよっ!!」
「猪(いのしし)とかひどいし。それより冴香、なんか綺麗になった?」
私は誰でも名前ぐらいは知っている大手ビルでOLとして働いている。
菜那と純は入社して以来の仲良しだ。
昼休憩に入り、彼の話をすると親友の2人は羨ましがったり呆れた表情をしていた
「で、雨の日に声かけられてついていっちゃったの?」
「普通、ありえないよね~そんなシチュエーション!!いいなぁー」
「それで、冴香はその人のこと好きなの?」
「んーどうなのかな?」
「はっきりしないわね~。大体、話し掛けられてのこのこついていくなんて高校生じゃないんだから!!」
「はっきり言ってそれって“ナンパ”だよね」
「ナンパより質悪いでしょう。家に連れてってヤリまくってんだから」
私はその質問に俯いてフォークにパスタを絡ませながら曖昧な答えを返した。
彼の言動や仕草にドキドキしてしまうのもそれは恋とはまた違うもので。
魅力的な人に見つめられたり、優しくされると誰でもドキドキしてしまう
彼と寝たこともそんな雰囲気がそこにあったからとしか言えない。
そんなことを考えているうちに2人の話し声が遠くに聞こえてふと彼に会いたいと思った。
帰り道、1人で歩きながら昨日までの出来事を振り返って私はきっと彼の事を好きだったんだと気づいた。
コツ…
コツ…
コツ…
サアァ…
でも、お互い好きとは言ってはいけない雰囲気がそこにはあって。
でも、確かにお互いに好意は持っていて
その雰囲気を好みながら楽しんでいた。
どちらからサヨナラと言うでもなく、お互いにいつか終わることを分かっていながらその時はそばにいてほしいと思って
抱き締めている…
けれど、去る時は追わない
そんな風の通るような恋も悪くないと思った
あの時は確かに彼を好きだったから
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