退屈の日々

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「えー、この問題に前の公式を使うのであって…」 静かな教室で、ただ、教師の声だけが響いている。 多数居る生徒の中で、一人だけ顔を伏せている生徒が居た。 (相変わらず、つまらない授業だ) と、その少年は思う。 彼は青野柚木(アオノ ユズキ)。 容姿は中々だがこれといった特徴が無く、特別好意を抱かれる事も多くない。 成績は良いわけでなければ悪いわけでもなくて、良く言えば普通、悪く言えば中途半端な学力だ。 そんな彼が勉強好きなわけもなく、授業中は大抵こうして過ごしている。 「……?青野君、寝てないで起きてください」 髪は白髪だらけで、もう定年なんじゃないのかと思わせるぐらいの男性教師が言う。 中々珍しい教師だ。 高校では、授業中寝ている生徒を起こそうとする教師なんて、数える程しか居ない。 「困りましたね」 白髪だらけの教師は嘆く。 だが、そんな声が少年に届くわけもなく、ただ淡い寝息を吐いているだけだった。
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