文芸部

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「ねぇ、編集長」 自分に向けた呼びかけだと、比呂が気づくまでしばらく時間がかかった。 「あっ、わたし?」 「ほかにいないじゃないですか。まったく鈴木先輩はぼんやりなんだから」 鈴木比呂は大学の文芸部に所属している。秋の学園祭と、春の新入生歓迎にあわせて会誌を発行するのが主な活動で、その編集長は代々3年生がつとめることになっていた。 来月出る秋号で、比呂がその立場になったのは、別に有能だからではない。 むしろ、たった今言われたように、ぼんやりしているからだ。ほかの3年生たちと話していて気がついたら、いつの間にか自分がやることになっていた。
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