3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、編集長」
自分に向けた呼びかけだと、比呂が気づくまでしばらく時間がかかった。
「あっ、わたし?」
「ほかにいないじゃないですか。まったく鈴木先輩はぼんやりなんだから」
鈴木比呂は大学の文芸部に所属している。秋の学園祭と、春の新入生歓迎にあわせて会誌を発行するのが主な活動で、その編集長は代々3年生がつとめることになっていた。
来月出る秋号で、比呂がその立場になったのは、別に有能だからではない。
むしろ、たった今言われたように、ぼんやりしているからだ。ほかの3年生たちと話していて気がついたら、いつの間にか自分がやることになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!