文芸部

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そう、わたしは編集長。だからこそ、こんな気持ちのいい日に――陽射しはまぶしく、風は涼しく、それが肌寒さに変わるにはまだ間の午後に、こうして部室なんかにやってきて、堅いベンチに腰をおろしている。 サークル棟と呼ばれる建物はグランドに面したプレハブで、床が砂埃でざらざらする。 文化系サークルの部室がいくつかあるが、いつもほとんどひと気がない。 日ごろの雑談などには、学生会館のソファを利用することが多いのだ。 文芸部も例外ではないけれど、何か作業する時にはどうしても、大きな机のあるここを利用することになる。 文芸部は小さなサークルで、部員は総勢たったの8名。 4年生が男女ひとりずつ、3年生が男子ひとり女子が(比呂含めて)2人。 1年生は男女ひとりずつ。そして2年生がひとりだけ、机をはさんだ反対側のベンチに腰をおろしている田村いずみだ。 ショートヘアに眼鏡をかけた彼女は、どことなく漫画の登場人物みたいに見える。 化粧気のない顔で服装はいつもジーンズ、特別美人ではないけれどではないけれど不思議に絵になる、そっけないかわいらしさみたいなものがある。 小柄で華奢――という印象をなんとなく持っていたので、いつか並んで歩いた時、165センチの比呂と同じくらい身長があるのを知って少し意外な気がした。
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