苺大福と玉露

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カーテンを両手で勢い良く開くと、薄く淡く、水色の空が優しい朝を教えてくれた。 「わぁ、いい天気!」 近頃の曇り空が嘘のようにすっきりとした空。 嬉しくってつい後ろを振り向けば、その朝日を知らんぷりするように形のいい頭が枕に押し付けられていた。 仕事行きたくない。 そうむくれて顔を見せない強情さに、つい笑う。 「まぁったく、子供かって! ほらほら着替えてっ」 「……絶対自分は折れないくせによく言うよ」 「えーいっ、ぐちぐち言わない! もー」 ムード台無しこの上ない告白から、三ヶ月が過ぎた。 ……まぁそれはあたしのせいだけどね。お腹すいちゃったのはもうしょうがない。 しかし。形勢不利に追い込まれると人の弱点突くの、やめてほしいんだけど。 言い返せないことを選んでぶつけてくる亮にぃの癖も、本当は甘えてるって判ってる。 そう心の中で呟いて、溜め息をついてうなだれるその背中に勢いよく飛び掛かることにした。 こんなに穏やかな日が訪れて、当たり前という幸せに甘えていたことに気付かされる。 気付けたのだからめっけもん、その幸せを守れる武器を身につけるために、今日も一日頑張りましょう。 「……太った?」 「はーいNGワードひとつー。次のご飯係は亮にぃね」
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