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「お茶をお持ち致しますね」
鉄之助はいつもと違う土方の様子に一抹の不安を感じつつ、少し空気を変えたいという思いから、水屋に向かい、慣れた手つきでお茶を入れ、土方の前にコトリと置いた。
煎れられた茶を一口飲むと、それまでの強張った空気が和らぎ、土方は目線を茶碗に向けたまま優しい顔でほほ笑んだ。
そしてぽつりと
「上手くなったな」
と、呟いた。
「沖田さんに、かなりしごかれましたから」
「総司か…確かに、あいつの味と似て来たな」
口許を綻ばせて、茶碗から目線を上げしばらく遠くを見つめていた土方は、決心した様子でゆっくりと視線を鉄之助に移し、切り出した。
「俺はこの地で死ぬだろう」
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