散華

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「……っ土方様」 突然告げられた一言の衝撃に、固まってしまったままの鉄之助を真っすぐ見つめ 「お前に頼みがある」 そう続けると、引き出しの中から一通の手紙、懐からは浅葱色の布を取り出し、目の前の机の上に置いた。 「これを日野の家族の元に届けてくれ」 日野の家族という事は土方の実家へ届けろという事。 この戦況や、先ほどの言葉から、手紙の内容は遺書であろう事が、鉄之助にも簡単に推測できた。 「嫌です!私は、土方様と共に討ち死にする覚悟で参りました。最期までお側で戦わせて下さい!」 外ではまだ隊士達の賑やかな笑い声がしている。 人に聞かれたくない内容だからこっそり自分だけ連れて来られた。 大きな声を出してはならない。 頭の中では理解できているが、あまりの衝撃に身を乗り出して叫んでしまうのを止めることができない。 そんな鉄之助の様子に、少しも動揺する気配を見せず、いつもの淡々として落ち着いた低く通る声で 「フンッ断るなら、今ここで斬り伏せる。」 と冗談交じりに告げた後、優しく柔らかい口調で 「だが、俺はお前に運んで欲しい。」 口調とは裏腹の、真っすぐで揺るぎない眼差しから、その決意の重さを感じ取り、鉄之助は目にうっすらと涙をためつつも、黙って首を縦に振るしか無かった。
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