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「承知致しました。お運び致します。…出過ぎた事をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
ためらいがちに中身を問おうとする鉄之助の言葉を待たずに
「辞世の句と遺髪だ」
手紙と布を拡げながら土方は言った。
「見ても…?」
「あぁ」
浅葱色の布は、新しいものでは無く、一目で新撰組の隊服を切った物だと分かった。その中には二つの髪の毛束があり、二つは赤い紐で繋がれていた。
手紙に目を移すと、柔らかな書体で兄弟に向けての言葉と、辞世の句が記されていた。
よしや身は
蝦夷が島辺に朽ちぬとも
魂は東の君やまもらむ
声に出して詠むと、バコッと拳骨が降ってきた。
「ばかやろう!誰が声に出して詠めって言った」
「すみません。つい…」
土方は、耳まで赤くしてそっぽを向いてしまった。
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