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土方は、少し遺髪を見つめた後
「そうか。じゃあ、両親の大切な品だ。シッカリ運べよ!」
大きくて少しゴツゴツした温かい手で、鉄之助の頭を撫でた。鉄之助は我慢していた熱いものが、瞳から溢れそうなのを悟られない様に、俯いたまま、承知しましたと告げて部屋を後にした。
鉄之助の後ろ姿を見送ると、おもむろに窓辺へ歩み、障子を開ける。思わずブルッと身震いしながら空を見上げると、シンと澄み切った闇夜を、綺麗な月が照らしていた。
どこで見ても、月は綺麗な物なのだな と感じながら、先ほどの鉄との会話を思い出す。
俺が守りたかったのは、東の君ただ一人…
東の君…お前と出会ったのも、こんな月の綺麗な頃だったな…
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