芽吹き

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そう言うと土方は立ち上がり、門戸の近くまで行くと、ふと立ち止まった。そして見送りに出て来ていた奥方に向き直すと、 「このカンザシは新しくこしらえたものですか?品の良いお顔によくお似合いです。」 とカンザシに手を触れながら笑いかけ、 「ではまた来月」 と、門を潜って外に出ると、来月は倍ぐらい売れるかもな…と少し自嘲気味に呟いた。 奉公先では問題の種にしかならなかった自分の容姿が、家業の石田散薬を売る武器になるという事は、既に自覚していた。
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