第一章 変死

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浮上と同時に最新の暗号通信専用のコンピューターICPUを使った通信が始まる。 リトミネンコ少尉は、その任務の正確を期すために、細かく時計の針を見て、時間ぴったりに話し始めた。 「やあ、ミーシャ久しぶりだね。よく聞こえているかい?」 「定期通信ご苦労。リトミネンコ少尉。よく聞こえています。こっちの音声もちゃんと伝わっているか?」 深海2万㍍を超える最深深度を持ち、任務のほぼ9割以上を深海で過ごすこの原子力潜水艦は、一気に外気を吸い込むと、『海抜0メートル』で行う仕事を一斉に行い始めた。ロシアの軍司令部に向けて定期通信を行っているのはこの艦の船長であるリトミネンコ少尉である。 彼は、元KGBの将校であり、ソビエト連邦時代は大佐待遇を受けていた。それがソビエトの崩壊によって、彼の身分は一気に少尉までに落ちた。彼はそれを不服とはせず、むしろ、薄汚い暗殺業から、国の威信をかけて戦う海軍将校の身となったことを喜びすらしていた。
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