第六章 リトミネンコの危機

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このようなときに、うかつに動き回ったり、家に閉じこもるのは逆効果であるということは当然知り尽くしている。かといって、相手の人数も把握できないまま迎え撃つのも得策とはいえない。 リトミネンコは、とりあえずいつもの酒場に向かうことにした。 何度も人通りの多い道を意図的に経由して迂回しつつ、何気なく、自然に。はじめから『そこ』へ向かっているようにカムフラージュして、周囲に注意を払いつつ、街を歩いていく。 その行動の意図に気付いたのか、相手は予定を変更したようで、曲がり角のところで一気に距離を詰めてきたのが分かった。 酒場に入られてしまえば人目があって、そうなると例えKGB全盛期の秘密警察であっても容易に殺人を行うことは不可能である。 一気に距離を詰めてくる相手との呼吸を取りながら、リトミネンコは手近なところで身を隠すことにした。もはや酒場までたどり着くことは不可能であろう、という判断である。
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