第一章 変死

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この定期通信では主な重要機密情報交換はコンピューター同士で行われる。このような音声による通信は、いわばテストに過ぎないので、比較的自由に会話ができるようになっているのだ。 そのとき、リトミネンコは、ふと見えないはずのミーシャの姿が目にうかんだような錯覚に陥った。 (なんだ?) それは長年の諜報部員として培った『勘』に類するものだった。 途切れた饒舌なミーシャの声の間に微妙な違和感が生じたのだ。 (なにかあったのか?) 「まあ、それは追って話す。ぜひ聞いてほしいんだ。UN63についての確実な情報を手に入れたの・・・最高のプレゼントになるわよ。」 (UN63・・・それはなんだ?) リトミネンコはそう思ったが、この通信も誰が傍受しているかわからない。とにかく細かい話は任務が終了してから聞けばいいのだ。 しかし、いきなりUN63という言葉が飛び出したことにもリトミネンコは違和感を感じた。何かがおかしい。もし、そのUN63がミーシャにとってもリトミネンコにとっても貴重な意味を持つ重要なものであるなら、このような通信でその『単語』を口にすること自体が危険極まりないのである。 「わかったよ。じゃあ、任務が完了したら、いつもの店で落ち合おう。」
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