プロローグ

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11月27日。 本格的な冬の到来を予期させる木枯らしが抜ける。 今年は既に2度、雪が降っている。 3日前にも降ったばかりだが、昨日今日は続けての晴天だった。 しかし、山間部にある古びた神社の広い庭にはまだ雪が残っている。 この木枯らしというのは休むことを知らないようで、木々に渾身の一撃を食らわせて通りすぎていく。 最後の葉を散らそうというつもりであるかのように、風は強固に叩きつける。 そんな中、落ち葉を黙々と掃いている人間の姿があった。 女だ。 飾り帯の無い浴衣、とでも言おうか。妙に時代や時期にマッチしていない、暖色系の和服を着ている。手には竹ぼうき。 また、髪の色も妙に赤く、どうにも周りの風景からは浮いていた。 風変わりな女は飛ばされてゆく枯れ葉をなんとか風の当たらない場所に集めている。 せっせせっせと集めつづけ、結構な時間が経ったところで庭の葉は大方片づけられていた。 小屋にちりとりを取りに行こうとした彼女の動きが、ピタリ、と、止まった。 遠くに、別の人影が見えた。 珍しい。 この古びた神社の敷地に、誰かが入って来るなんて。
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