僕が僕である為の方法

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中学に通って、初めての秋の音楽コンクールが始まった。一週間に渡って行われるそのコンクールの前半はクラスごとで演奏し、後半は各クラスの代表生徒六名が一人で演奏する、大きな学校行事だ。 ボクは、代表生徒の一人として選ばれた。理由なんて、天才ピアニストの妹だからという理由だ。もちろん、選ばれなかった生徒からの批判は強かった。 当日は来賓も少なかったが、出席者は半端無かった。これであがらない方がおかしいと思う半面、今日はボクのダメな演奏を聞く為にご苦労様と内心で言った。 それもこれも、今日はクラス内でもギリギリ上手いと言える部類に入る生徒達の演奏会だった。 最後に出番があるボクは、フルート片手にステージの上手でぼんやりとしていた。 黄色いドレスに白のヒールが低めのパンプスが、足に合わずに痛かった。 ボクの出番になると、ステージの真ん中に立って、会場全体を見回した。コンクールは初めてじゃない。小学校の時から何度もやっていたからさほど緊張もしなかった。 体を90℃に曲げてからフルートを構えて演奏を始める。 フルートから奏でられる綺麗な音は、強弱を付けて生きる音になる。
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