心のキャッチボール

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心のキャッチボール

海開きも、終わった、七月二十六日、俺は愛車のハーレーダビッドソンで、りゅうを、海へ連れて行った。俺が海へもぐって、さざえや、カキをとって、二人で食べたり野球の好きな俺は、キャッチボールを教えた。 キャッチボールは、手と手を握っているわけでは無いのに、不思議と、相手の気持ち、心境が白球で伝わる。 りゅうは、自然にボールを、左手で投げた。母親のまり子もりゅうも、足が速いのを知っていた俺は、これは行けると思った。 りゅうは、砂だらけになりながら、ボールを追った。 俺は、娘達とは、こういうシーンは、無かったなと思い、目が熱くなった。 家に帰ると俺は、りゅうに、ハーレーダビッドソンのキーホルダーと、右手にはめるグローブをプレゼントした。 今までに、見せた事のない笑顔で、りゅうは喜んでくれた。 父親のいない、りゅうは、よほど嬉しかったのだろう。 「おじさん、ありがとう、俺が大きくなったら、一緒にバイクで走ろうょ!」 「オウ、待ってるぞ、りゅう!」 「うん、でも、それまではハーレーに乗せてね」 「おう、あたボーヨ。」 そう言いながら、俺たちは、キャッチボールを始めた。 運動神経の良い、りゅうは、覚えるのが早い。何しろ、ボールを怖がらない。 俺の右手に、ボールが入るたびに、涙が、込み上げて来る。 それと同時に 甲子園という、三文字が、頭をよぎった。沈みかけた夕日が、秩父連山の影から、二人を、見ていた。 それからりゅうがクラブチームに入るまで、数えきれない白球が、二人の間を、行ったり、来たりした。
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