Full metal horse-man

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 街を灼く太陽を恨めしく睨んだ。アスファルトの上の陽炎は、地平線までも歪めてしまっている。足から溶けてしまいそうだ。そして、アスファルトに染み込んだら、人間は何処へ行くのだろう。有り得ないことなのだが、そんなことを考えてしまう。それはは、この暑さがそうさせているかもしれない。  私の前を行く間宮は、棒から剥がれ落ち、無惨にもアスファルトに溶けて染み込んだアイスを無表情で見つめている。先程まで幸せそうにアイスを食べていた顔が、今は完全な無表情。  そんなことより、この暑さは何なのだろうか。四ツ葉デパートまでは、あと二十分程……。このままだと本当に溶けそうだ。  まだアイスとの邂逅を嘆いている間宮を追い抜くと、煩いくらいの重厚なエンジン音を響かせた一台の高級外車が、間宮の目の前で停車した。  後部座席の窓が開く。 「ごきげんよう、間宮京子。それに……、斎藤、だったかしら?」 「何か?」 「大したことじゃありませんの。ただ、このクソ暑い中、そこの庶民は何していらっしゃるかなと思いまして。わざわざこの私が足を止めたのですわ」 「そうですか」 「ちょっと。私は間宮京子と話しているのです。間宮京子、地面なんかと見つめ合ってないで私を見なさい」  これは、面倒臭い奴が来た。  椎名苺。その可愛らしい名前と性格が正反対な椎名家の令嬢。典型的なお嬢様だ。その財力にものを言わせた暴虐によって、取り巻き達からは苺姫と呼ばれている。  そして、何故かいつも間宮に突っ掛かる。それこそ顔を合わせる度にだ。一度、椎名と間宮は同じクラスだったらしいが、その時に何かあったのだろうか。間宮と椎名の二人が揃っていて、何も起きない方が奇跡なのだが……。
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