102人が本棚に入れています
本棚に追加
ちなみに那水は腰を抜かしたまま動けなかった。
途智はそんな彼女の『ひとりにしないで』と言う無言の訴えに従うことにしたのだ。
― 扉を開けると、そこは真っ白な世界が広がっていた。 ―
先ほど夢(妖力)で見た光景と同じだったのだ。
或斗と模果は注意深く霧の中へと足を踏み入れていく。
「森…だよね。」
「森だな。」
お互い確認しあうような会話が交わされる。
霧の中にうっすらと広がる景色は紛れもなく森の木々たちだ。
「キャンプ場だよね。」
確認するように問いかける摸果、その腕は必死に或斗の腕を捕らえて離そうとしない。
しかし問いかけに返事は無いのだ。
ただ険しい表情の幼馴染が無言でたたずんでいるだけだ。
「ねえ、或斗。どうしたの?」
その視線の先を覗き込みながら、再び問いかける模果。
「ここはキャンプ場じゃないな。」
搾り出すように言葉を吐き捨てる或斗。
視界を覆い尽くすほどの濃い霧漂う森の中、しかしその先には木々ばかり。
キャンプ場にあるはずのバンガローは映し出されていないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!