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残ったのは、母上の指輪と、僕ひとり。
「くくくっ」
僕は指輪を握り締めて小さく笑った。
そして静かにベッドから出る。
なるべく静かに、音を立てないで部屋のドアへと向かう。
誰にも見つかってはいけない。
この指輪を母上の部屋に返しにいかなくては。
僕が持っていては怪しまれるからな。
ドアを静かに開けて部屋の中を振り返る。
月明かりが静かに、ただ静かに、僕の部屋を照らしていた。
さっきまでこの部屋で行われていた秘密の会話が、まるでなかったかのように。
【END】
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