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現在時刻、9時52分57秒、58、59……。9時53分。
駅前の大きなショッピングモールの前にて。
腕にはめたデジタル時計を小さく読み上げてみるも、心の揺れは全く治まらなかった。
でもしかたがない。
なんてったって今日は、念願の人生初デートの日なのだから……!
ぱっぱかぱー。虚空のファンファーレ。にやけそうになるのを我慢していると、ポケットの携帯が震えるのがわかった。
お……。
今の携帯というものは大変便利なもので、個別にバイブレーションの動き方を設定できたりする。
僕の携帯だと、この三拍子のリズムは、待ち人である愛花さんにセットしてあるのだ。
僕は素早く携帯を開く。
デフォルトのまま変える気のない待ち受け画面には、新着メールを知らせる表示。
受信箱と直リンクするそれにカーソルを合わせ十字キーの真ん中を押すと、案の定それは愛花さんからのメールだった。
ちょっと遅れる、とかかな……、なんて思いながらメールを開くと、
『わたし、アイカ。今あなたの……』
そこから空行があって、一番下には、
『後ろにいるの』
なんだ、と訝しんだその瞬間……。
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